がんの再発に対する不安や、再発に直面したときの支えとなる情報をまとめた冊子です。
がんの再発という事態に直面しても、「希望を持って生きる」助けとなりたいという願いを込めて、再発がんの体験者、がん専門医らとともに検討を重ねて作成されたものです。
がん患者さんとそのご家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲート(道案内)します。
日本で唯一米国国立がん研究所(NCI)とライセンス契約し、PDQ®日本語版をはじめとするがんに関する最新かつ包括的な情報を配信するサイトです。
がん治療には、手術・化学療法・放射線療法・緩和治療などがあります。それぞれのがん治療に伴う口腔の問題点を図1に示します。
がん治療に伴う急性期の口腔内合併症で最も頻度が高いものは、口内炎(口腔粘膜炎)です(写真1~3)。
頭頸部への化学療法や放射線療法、造血幹細胞移植や大量化学療法は、特に口内炎が強くでますが、通常の抗がん剤治療を受けた患者さんの約40%に口内炎が発症するといわれています(図2)。
抗がん剤や口腔がんの放射線治療が原因の直接的な口内炎は、口腔内が衛生的な人でも起こりますが、口腔内が衛生的でない人は、この直接的な口内炎に加えて局所感染性(2次性)口内炎がおこります(写真4)。
歯垢(デンタルプラーク)1mg中(耳かき1杯分)には細菌が1000億個も存在しています。歯垢が石灰化したものが歯石です。抗がん剤などで体の免疫力が低下した場合に、歯垢や歯石が付着していたり状態のよくない歯がある場合、細菌感染がおこり口内炎が悪化します。
口内炎がひどくなると、がん治療が中断したり続けられなくなったりしますので、治療中は口内炎を悪化させないことが非常に重要です。まずは口腔内を清潔に保つことです。小さな口内炎でも痛みで周囲の清掃ができないと急激に悪化したりするので、歯科医院で歯垢除去をしてもらったり適切な歯ブラシの使い方を指導してもらったりしてください。
また最近では良い薬などもできています。例えば、2018年に新しく発売されたエピシルⓇ口腔用液は口腔粘膜をゲル状の膜で保護するもので口内炎の疼痛緩和に効果的です。保険治療で使用することができますので歯科医師に相談して下さい。
全身麻酔の手術を行う場合は、著しい動揺歯などがあれば挿管チューブ挿入時に脱落し、食道や気管に迷入する恐れがあります。特に気管に迷入した場合は気管支鏡を用いて除去しなければなりません。また、口腔内が不衛生であると、挿管チューブとともに気管内に歯垢(デンタルプラーク)を押し入れることになりますので、人工呼吸器関連肺炎(VAP)や誤嚥性肺炎などの術後合併症のリスクが高くなります。
大きな手術のあとは、しばらく人工呼吸器管理を行ったり、鼻から胃に管を通して栄養剤を入れる経管栄養を行うことがあります。口から食事をしないと口腔機能は低下し、乾燥するとともに口腔細菌数は通常の約7倍に増えるといわれています(写真5,6)。
がん治療に伴う後発性の口腔内合併症もあります。頭頸部への放射線療法後、放射線性骨壊死が生じたり、唾液腺障害による口腔乾燥症や味覚障害が生じることがあります。また、がんの骨転移に対してビスホスホネート系薬剤やデノスマブを使用された場合、抜歯などの処置を行ったあとに顎骨壊死や顎骨骨髄炎がおこることがあります。これらの合併症は、がんを克服しても、摂食・嚥下機能を低下させ生活の質を下げてしまいます(写真7~10)。
平成24年4月より歯科の保険診療に「周術期口腔機能管理」という項目が新設されました。周術期とは、病気が診断されてから、入院・麻酔・治療・回復といった一連の期間を指します。周術期口腔機能管理は、がん患者さんが治療を受ける前後に、歯科医師や歯科衛生士が口腔内の感染源を除去し口腔衛生をよくすることで、口内炎の程度を最小限におさえ、誤嚥性肺炎や人工呼吸器関連肺炎などの合併症を予防し、生活の質を保ちながらがん治療を円滑にすすめるためにつくられました。
口腔ケアは、がん治療の生存率に直接影響を与えることはありませんが、がん治療に伴う口内炎の症状緩和・感染回避・治療完遂をサポートしQOLを向上させる大切ながん支持療法です。がん治療を受けられる方は、ぜひ歯科を受診してください。
もし、かかりつけの歯科医院がない場合は、各地域にがん治療中の口腔ケアや歯科治療についての知識を習得した「がん診療連携歯科医」が登録されていますので、下記または各都道府県歯科医師会にお問い合わせください。
徳島大学病院 口腔管理センター | 電話 088-633-7369 | |
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