「年次有給休暇」(一般的には「年休」や「有休」と呼ばれています)は、希望する日に休みを取ることができる制度です。
労働基準法で定められた制度です。
有給の休暇ですから、休んでも給料は通常どおり支給されます。
会社に雇用された日から6か月間継続して勤務し、働く日と決められている日数(所定勤務日数)の8割以上出勤した場合に10日の有給休暇が与えられます。
その後、1年を経過するごとに所定勤務日数の8割以上出勤すれば、下表の有給休暇が与えられます。最大20日です。
利用しなかった有給休暇は、翌年に繰越しすることができます。
(正社員、臨時職員など)
勤続年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月 | 10日 |
1年6ヶ月 | 11日 |
2年6ヶ月 | 12日 |
3年6ヶ月 | 14日 |
4年6ヶ月 | 16日 |
5年6ヶ月 | 18日 |
6年6ヶ月以上 | 20日 |
(パートタイマー、アルバイトなど)
週所定勤務日数 | 4日 | 3日 | 2日 | 1日 | |
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年間所定勤務日数 | 169日~216日 | 121日~168日 | 73日~120日 | 48日~72日 | |
勤 続 年 数 |
6ヶ月 | 7日 | 5日 | 3日 | 1日 |
1年6ヶ月 | 8日 | 6日 | 4日 | 2日 | |
2年6ヶ月 | 9日 | 6日 | 4日 | 2日 | |
3年6ヶ月 | 10日 | 8日 | 5日 | 2日 | |
4年6ヶ月 | 12日 | 9日 | 6日 | 3日 | |
5年6ヶ月 | 13日 | 10日 | 6日 | 3日 | |
6年6ヶ月以上 | 15日 | 11日 | 7日 | 3日 |
会社によっては、法定日数以上の日数を与えてくれるところもあります。
半日や時間単位で休みが取れるところもあります。
入院期間が短く、身体的な影響も少ないことであれば、有給休暇の範囲内で治療を受けることも可能でしょう。
手持ちの有給休暇を使い切ってしまい、ほかに利用できる休暇制度がない場合は、その後休めば欠勤扱いになります。
欠勤した日は、仕事をしていないので給料は支給されません。
手持ちの有給休暇の日数やほかに利用できる休暇制度などについて、就業規則などで確認しておくことが必要です。
入院や自宅療養などでしばらく休む必要がある場合は、早めに病気のことや治療予定のことを上司や会社に伝え、休むことに配慮してもらいましょう。
仕事が忙しければ、上司や周りの同僚に気兼ねをし、そう簡単に休めないこともあるでしょう。
病気に対する理解のない職場もあることでしょう。
仕事は生計を維持するためにも大切です。
通院や入院が必要と言われても、休むことができないならば、治療する気持ちになれず、悩みます。
だからと言って、治療をあきらめたり、途中で治療をやめたり、入院を先送りしたり、隠して十分治療を受けなかったりして、病状を悪化させてしまっては元も子もありません。
取り返しのつかないことになったら、大変です。
自分一人で解決しようとしないで、上司や会社に事情を説明し、相談してください。
通院の時間帯や通院回数数なども工夫をし、定期的に休むことに配慮してもらえるよう相談することが大切です。
入院しなければならないことになったら、そのことを遠慮せずに伝え、治療に専念させてもらえるよう配慮してもらいましょう。
会社には、社員が健康で働き続けるために配慮する義務(安全配慮義務)がありますので、応じてくれると思います。
病気のことを知られたくない、ギリギリまで無理して働こうなどの思いも巡り、伝えることに勇気がいります。
先行きに不利益になるかもしれないという心配もあります。
しかし、体調のことを正確に伝えておかないと、配慮してもらえません。治療にも期待はできません。
働きながら治療を続けていくには、上司や同僚の理解と協力が必要です。
常日頃から信頼を得ておくことが大切です。
会社によっては、有給休暇とは別に「病気休暇制度」や「休職制度」などを設けているところがあります。
法律で定めのある制度ではありません。任意のものです。制度を設けている会社であっても、取扱いはさまざまです。
制度を設けているところの一般的な内容は、病気で長期入院が必要となった社員のために、一定期間休職扱い(有給または無給)にして、治療に専念できるよう休むことができる制度です。
その期間中に病気が回復すれば復職できますし、休職期間が満了しても復職の見込みが立たなければ退職となるものです。
会社に制度があるか、あれば利用できる対象者、手続きの方法、休職できる期間、復職の条件などについて、就業規則などで確認しておく必要があります。
特別な制度がなければ、欠勤を続けることになりますが、欠勤が多くなると勤務の評価に影響するかもしれません。
さらに長引けば、労務の提供が困難とみなされて、解雇(または契約を更新)されないともいえません。
欠勤が長引くことによる影響について、就業規則などで確認しておくことが必要です。
がんと言われたとき、すぐにでも会社をやめて治療に専念したい思いにかられます。
長期の入院を言われたときや仕事の継続が難しいと思われるときにも、職場に迷惑をかけたくない、長期の休みが取れない、退院してもすぐに仕事に行くことができるかどうか不安、長く休むことで人事評価に響くかもしれない、などと考えて「やめようかな」と悩みます。
働き続けたい思いを持ちながら、やめていく人が多いという現実があります。
がんと言われたから、病気だから、入院するから、といって、すぐに会社をやめることはありません。
病気のことを上司や会社に伝え、職場の皆さんの理解と協力を得て、快く入院し、元のようにバリバリと働くことができるよう、この機会にしっかりと治療に専念することを考えることが大切です。
早まってやめることはありません。
治療と仕事の両立は身体的にも精神的にも苦しいと思うかもしれませんが、やめてしまった後の方がもっと大変だと思います。
仕事との両立を前提に、ものごとを解決することを考えることが重要です。
長期間となることに備え、休暇制度をうまく利用し、特別な休暇制度がない場合には会社に話し合って配慮してもらえるようにして、治療に専念してください。
長期に休むことですので、給料が支給されなくなってもやむを得ないと思われますが、その場合には、加入している医療保険から休職中の生活の保障として「傷病手当金」が支給されます。
仕事に段取りをつけて、心配しないで安心して治療に専念しましょう。
会社をやめるという重要な問題を、早急に決断するのは避けたほうがよいと思います。
長い期間休職していると、職場復帰をしたときに、以前と同じように仕事ができるだろうか、と不安が高まります。
復帰する時期をいつにしようか、と思案します。
仕事ができるためには、日常生活を支障なく行えることが前提です。
通勤や仕事にも負担がかかりますので、耐え得る体力を備えていることが必要です。
治療が一通り終わり、体調も落ち着いてきたら、復職の判断が必要となります。
復職できるかどうかは、主治医の診断書をもとに、本人の意向や、上司や産業医(産業医のいる職場)などとの面談を通じて、判断されることが一般的です。
その際には、復職後の勤務内容や勤務時間なども検討されます。
迷惑をかけたので、その分早く取り戻そうと頑張ってしまいがちですが、すぐには休職する前と同じように働けないことは当然です。無理をして再発しては大変です。
職場生活のリズムが取り戻せるまでの間は、少しずつ仕事量を増やしていったり、勤務時間や残業などに配慮してもらえるよう上司や会社に伝え、体調に見合った働き方についてよく話し合うことが大切です。
(会社によっては、勤務時間を短縮する制度や時差出勤を設けているところもあります)
職場復帰をしたら、配置転換させられた、降格された、という不本意なこともあるかもしれません。
会社には配転命令権や人事権があり、本人の同意がなくても会社の裁量によって行うことができます。
しかし、相当な理由がないのに配置転換をしたり、降格をしたりすれば、それは配転命令権や人事権の濫用と言えます。
休職したことのみが理由であったり、意図的に退職に誘導させるためであったり、受ける不利益が大きいという場合は、濫用とみなされ無効となります。
無理をさせてはいけないと体調を配慮してもらってのことであれば納得できるかもしれませんが、まずは、会社に異動や降格などの理由を確認することが必要です。
休職する前と同じように働けるのであれば、そのことを会社に伝え、話し合いましょう。
それでも納得のできない配置転換などであれば、徳島労働局の「総合労働相談コーナー」に救済を求める相談をしてください。
(公務員の場合は、国家公務員は人事院、県職員は県人事委員会、市町村職員は公平委員会です)
病気や入院のことを伝えると、退職を迫られたりすることも考えられます。
仕事ができる状態にあるにもかかわらず、退職を勧めることは適当な措置とは言えません。
病気になったから、入院するから、といって、会社をやめなければならないわけではありません。
退職を迫られたら、退職する気持ちがない場合は、「退職しません」とはっきり言うことが大切です。
応じる義務はありません。
それでも強引に退職を迫られたら、徳島労働局の「総合労働相談コーナー」に救済を求める相談をしてください。
(公務員の場合は、国家公務員は人事院、県職員は県人事委員会、市町村職員は公平委員会です)
長く休職していると、職場復帰はできないだろう、復帰しても以前と同じように仕事することはできないだろうなどと思われて、解雇されたりすることも考えられます。
休職している社員の社会保険料を負担し続けるのは大変、いつまでも欠員のままにしておくわけにはいかない、として継続雇用に消極的な会社もあります。
休職期間が満了しても、復職できる見込みが立たない場合や仕事ができる体調でない状態が続いているような場合には、解雇されることもやむを得ないと思われますが、その場合には、いい条件が得られるよう話し合ってみることが必要でしょう。
解雇とは、会社と労働者とが結んだ労働契約を、会社側の意思で一方的に終了させることです。
しかし、自由に解雇できるというものではありません。
まず第1に、解雇に値する合理的な理由が必要です。
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効です。
第2に必要なのは、解雇予告の手続きです。
労働基準法で義務づけられているものです。
労働者を解雇するときは、少なくとも30日以上前に解雇の予告をしなければなりません。
解雇予告をしないで即時に解雇しようとするときは、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。
解雇を言われたら、納得できないことであれば、「やめたくない」とはっきり言ってください。
それでも言われるようであれば、その理由について証明書(解雇理由証明書)を請求してください(労働基準法で事業主に交付が義務づけられています)。
就業規則には解雇の定めがあるか、あればそれに基づいているか、解雇予告の手続きはなされているか、の確認をしてください。
不当と思われる解雇であったり、強要されたり、解雇予告の手続きがなされていない、ということであれば、徳島労働局の「総合労働相談コーナー」に救済を求める相談をしてください。
労働条件を一方的に不利益に変更された、退職を迫られている、解雇を言い渡された、などで会社と言い争いになってしまったということも考えられます。
その解決の相談には、徳島労働局の「総合労働相談コーナー」があります。
労働問題の専門家(弁護士等)で構成する紛争調整委員会が間に入ってくれて、紛争のあっせんをしてくれます。時間的にも早く済み、しかも無料です。
総合労働相談コーナーに行くときには、「復職までの経過、言われた内容、誰(役職名)から、その日時、理由や根拠」などを記載したメモと就業規則を持って臨んでください。
事実関係やその状況を具体的に説明することができ、問題の解決につながると思います。
(公務員の場合は、国家公務員は人事院、県職員は県人事委員会、市町村職員は公平委員会です)
そのほかに、県の労働委員会(徳島市万代町 県庁11F)、県社会保険労務士会の労働紛争解決センター(徳島市南末広町 徳島経済産業会館2F)、地方裁判所の労働審判手続き(徳島市徳島町)などもあります。
治療や療養に専念したい、会社には休職できる制度がない、仕事を続けたいががんが障害になる、職場に迷惑をかけたくない、家族からやめるよう勧められている、仕事への意欲を失った、ということもあるでしょう。
重要な問題ですので、家族とよく相談して決めてください。
会社は、退職願を提出すればやめることができます。
退職の予告もせずに、いきなり会社に行かなくなることは、ルール違反です。
上司と話し合って、退職日をいつにするかを相談して決めるとよいでしょう。
就業規則に定めがあれば、それにしたがっての手続きとなりますが、一般的には退職予定日の1か月前、遅くても2週間前までに申し出る必要があります。
退職すると、社員としての身分を失いますので、貸与されていたものはすべて返還します。
健康保険証も返さなければなりません。後日、「離職票」を受け取ります。
雇用保険から失業手当(正しくは基本手当)の支給を受けるために必要なものです。
(公務員は雇用保険に加入していません)
なお、会社をやめれば退職金がもらえるとは限りません。
会社にその定めがないと支給されません。
職場復帰をしたものの、体力的にみて働くことが厳しい、これ以上周囲に迷惑をかけたくない、会社の理解が得られない、などで仕事を続けることがつらくなることも考えられます。
体調が今なお不安定な状態が続くようであれば、一時的に仕事量を減らしてもらったり、勤務時間を調整してもらうなどの配慮をしてもらえるよう、上司や会社に伝えることが必要でしょう。
体調が厳しい状況にあったり、体力に見合った働き方ができない、会社の対応に期待ができない、職場に居づらい、というようであれば、体調を崩してしまっては大変ですので、今後の療養の仕方や働き方などについて家族とよく相談することが大切です。
働くことができる体調に回復すれば、再び仕事をしたい気持ちになります。
再就職や自営業などに従事をめざすことになります。
万全な体調と、治療生活を支えてくれた家族の理解と協力を得て臨みましょう。
再就職としては、正社員、パートタイマー、アルバイトなどがあります。
正社員という働き方に加え、契約社員、派遣社員といった方法もあります。
また、在宅で仕事をする在宅ワークという働き方もあります。
当面は体調管理を優先し、これまでの働き方や自分自身を振り返り、何ができるか、生かせる技能や資格は何か、どんな仕事をしたいか、働き方は、勤務地は、給料は、勤務時間はどの程度まで可能か、残業はできるか、通院に支障はないか、などをよく考えて求職活動をすることになります。
病気療養中は雇用保険の失業手当(正しくは基本手当)の支給が受けられないために受給する時期を先延ばししていた人は、延長の理由が終わったことをハローワークに届け出て、手当の支給を受けながら求職活動をすることになります。
基本手当の受けられないパートタイマーであった人などは、スキルアップをめざす職業訓練(求職者支援制度)を受けてから、という方法もあります。
治療をしたけれど障がいを持つ身になったという人は、障がいの程度に見合った仕事の仕方などの支援を受けてから、ということになります。(公務員は雇用保険に加入していません)